業を負う男たち、旅路の果てに出会うものは。
兄さん、今からあんたを殺しに行くよ——。
大阪ミナミの廃院に独り住む三宅紘二郎のもとに、1通の絵葉書が届いた。葉書に書かれた漢詩に、紘二郎の記憶の蓋が開く。50年前、兄の征太郎は紘二郎が愛した女とその娘、さらには寝たきりの父親を斬殺した。なぜ今頃、と思いながらも、閉じ込めていた怨みを止めることはできなかった。絵葉書が兄の居所を示唆している。紘二郎は兄を殺すため、大分に向かう決意を固める。
思い出の旧車を手に入れ、旅に出ようとする紘二郎の前に現れたのは、中古車店の元店長を名乗る金髪の若者・リュウだった。紘二郎の買ったコンテッサはニコイチの不良車で危険だと言う。必死に止める様子にほだされ、紘二郎は大分への交代運転手としてリュウを雇うことに。孫ほど年の離れた男との不思議な旅が始まった。
かつて女と暮らした町、リュウと因縁のある男との邂逅、コンテッサの故障……道中のさまざま出来事から、明らかになってゆく二人の過去。あまりにも陰惨な心中事件に隠された驚きの真相とは。リュウの身体に隠された秘密とは——? 旅の果て、辿りついた先で二人の前に広がる光景に、心揺さぶられる感動作。
※この作品は過去に単行本として配信されていた『緑陰深きところ』の文庫版となります。
2024 | 11/20 | 水曜日 |
2024 | 11/22 | 金曜日 |
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