随筆・評論第2弾。昭和6年から終戦までの乱歩の軌跡を発表順に。海野十三、小栗虫太郎らとの奇談会や講演録も。
昭和8年「独逸ナチスの焚書をどう見る?」とのテーマのもとに書かれた一文は、現在の歴史認識から言っても極めて妥当な意見であり、また同時掲載された他の文学者のコメントと比べてもかなりデモクラティックな認識に立った見解である。それから10年後、町内会副会長、隣組の組長として、あるいは特派記者として執筆された随筆やルポには、その面影はいっさい見当たらない。あの時代のごくごく一般的な壮年男子の物の見方、見識である。はてさて、それは乱歩の真意であったのか、それとも処世術であったのか。また、この時期乱歩は、探偵小説とは何かを真摯に追求し思考する一方、同性愛に関する記述も多く書き残している。ここで語られるのは、ギリシア的恋愛、武士道的友愛といった、謂わばプラトニックな同性愛であるが、それらは乱歩の作品世界を構成する重要な要素であるとともに、人間・乱歩の厚味を支えるものでもある。このあたりは、「J.A.シモンヅのひそかなる情熱」を軸に乱歩作品のダーク・ヒーローとその魅力について解き明かす小松史生子・金城学院大学教授の鮮やかな解説をご一読いただきたい。
「大乱歩」になる前の、思考し、探求する乱歩の姿がここにある。
特典として、大下宇陀児、木々高太郎、海野十三、小栗虫太郎ら総勢8名の作家がとっておきの話を持ち寄って語り競う「持ち寄り奇談会」(昭和10年/『新青年』)を丸ごと収録。虚実ない交ぜの洒落た短篇集といった趣きである。
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