芸術家の苦悩を描いた著者の処女長編小説。
関東大震災と第二次世界大戦という二つの歴史的大事件に挟まれた16年間——画家・桂が片時も忘れえなかった昔の恋人・三枝夫人との再会と、すれ違った愛の行方を追い求め描いた作品。
世界が激しく揺れ動いた時代、日本という風土に生まれ育った芸術家の思索、苦悩、そして愛の悲劇を通して人生の深淵に迫った力作である。完成までに十年の歳月を費やした福永武彦の文学的出発点ともいえる。
解説は芥川賞作家であり、福永武彦の長男でもある池澤夏樹氏。
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