色川が“阿佐田哲也”を「奴」と呼び展開する異色作『小説阿佐田哲也』や『無職無宿虫息』、幻の短篇「空の女」を収録。
色川自身が“作家・阿佐田哲也”について「奴」と呼び、他の博奕打ちとの会話を軸にストーリー展開する『小説阿佐田哲也』。単行本あとがきに「面倒だから、他者も出さない。作中人物は、自分の分身で済ませてしまう。一人言小説、近親者小説である」と記す。二人の作家の顔をもつ色川が、そのキャラクターが綯い交ぜになるような演出の妙を醸し出す異色作品。
また、『無職無宿虫の息』は1977年から79年にかけて「小説現代」に断続連載された短篇7篇で構成。戦中戦後に青春時代を過ごした「私」による、名人の落語の速記録を読むような語り口が、落語好きの色川らしさを表している。
『あちゃらかぱいッ』は浅草芸人たちの痛切な生き様を描いた伝記小説集で、さらに、単行本未収録作品が5篇も収録。特に「空の女」は、雑誌「ショートショートランド」1982年春号に掲載された小篇で、全集等にも未収録の貴重な一篇として注目される。
解説は、作家の佐伯一麦氏。付録として『あちゃらかぱいッ』所収の「ヘロヘロ伍一」と「浅草葬送譜」の生原稿等を収録。
2024 | 10/16 | 水曜日 |
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