天皇の死を通して日本近代の成り立ちを追った歴史ミステリー。
独自の視点による天皇制考察の端緒となった猪瀬直樹の処女作『天皇の影法師』(1983年3月朝日新聞出版刊、1987年8月新潮文庫、2000年1月朝日文庫、2012年4月中公文庫)を収録。
大正15年12月15日未明、天皇崩御のその朝、新元号を「光文」とスクープした世紀の誤報事件の顛末は? 歴代天皇の柩を担いできた「八瀬童子」とは何者か? 最晩年の森鴎外が「元号考」に燃やした執念、そこから見えてくる「昭和」の意味と決定と経緯とは? 丹念なフィールドワークで貴重な文献と証言を掘り起こし、天皇の死を通して日本近代の成り立ちに迫った歴史ミステリー。イデオロギーとしての天皇制ではなく、現代史・民俗史の観点から天皇の本質に切り込んだ猪瀬直樹の原点。
本書には巻末に文庫にはない、久世光彦「鵺伝説」(新潮文庫版解説)、網野善彦「学恩に応えるための、二、三の感想」(朝日文庫版解説)、竹内整一「可視化の《ロゴパトス》」(『猪瀬直樹著作集』解説)を収録、それぞれの視点から作品を読み解く。また、単行本刊行時に各紙誌に掲載された、高尾亮一(元皇居造営部長)、平井啓之、夏堀正元、黒田清各氏による書評も収録する。
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