芥川賞受賞作『岬』の前奏曲ともいえる『蝸牛』ほか、『羅漢』『蛇淫』等の短編17作収録。中上飛躍前夜の昂奮がここにある!
短篇『蝸牛』は、芥川賞受賞作『岬』の前奏曲のような作品。クライマックスで主人公は、ヒモになっている女の「義足をつけた兄」の家に押しかけ、こぶ付きの女のために、「なんとかしたれよ、なんとか…」と喘ぎながら、突発的に彼を刺殺する。『岬』で語られた秋幸の姉の夫が被害者となる殺人事件を先取りする、「路地」的風土の最深部で生起した出来事であった。
「姉(イネ)つらいねえ」という辻々で交わされる挨拶の言葉がことに印象的な『路地』。『臥龍山』、『藁の家』は必読の連作で、その冒頭に配された「日和山から長山みれば裸(はだか)馬(うま)かよくらもない」という「歌」は、一連のサーガ(物語群)を理解する上で聞き捨てならない。中上的な作品風土である「路地」の解体=再開発は、この龍が伏したように蛇行する臥龍山の尾根の撤去によって80年代に完成するのである。その最終プロジェクトの名が「日和山(ひよりやま)開発」であったのも象徴的で、市内を二つに隔て交通の障害ともなっていた「路地」の裏山が、そのターゲットとなったのだ。
第9回の本巻では、『岬』で芥川賞を受賞する前後の「路地」世界の生成に立ち向かう作家の志を指し示す17の短編が収録されている。
特別寄稿として、長女・紀の回想録「家族の道端」(9)、現代作家が語る「中上文学の神髄を語る」(5)星野智幸を掲載。
付録:『風景の向こうへ』サイン本等を収録した「特別資料」(7)」と、「路地」の過去と現在を紹介した「中上健次写真館(5)」を収録。
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※この作品にはカラー写真が含まれます。
2024 | 10/16 | 水曜日 |
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