「黒い布」以前、井上志摩夫名義で約6年間に記した娯楽小説57篇を一挙収録。単行本未収録の貴重な習作21篇が今甦る!
色川武大の名が文壇に轟いたのは、「中央公論」1961年11月号に掲載された「黒い布」から。「自筆年譜」によると「昭和30年 二十六歳(略) 生活費稼ぎに、娯楽雑誌編集者の友人たちを頼り、井上志摩夫などといったぺンネームで娯楽小説を書く」というおよそ6年間余の期間があった。
「傑作倶楽部」「読切雑誌」「大衆小説」等の双葉社の娯楽雑誌に収録された井上志摩夫名義の時代小説36篇が、「井上志摩夫傑作時代小説集」全5巻(『切腹』『人斬り』『名無しの恋兵衛』『巷説天保六花撰』『稲妻駕籠』)として、1997〜98年に発売され、ベールに包まれた「井上志摩夫」の世界が一部日の目を見ることとなる。当時の様子は担当編集者だった柳橋史氏による解説「井上志摩夫の六年間」(当巻に再録)に詳しい。
当巻の目玉は、単行本未収録作品群として、「時代小説集」に漏れた「片眼片腕片えくぼ」から「氷雨に住む獣」までの時代小説12篇と、「立川発23時55分」から「紙の月と描いた雲」までの現代小説9篇である。なお、これらの作品の底本は、色川氏自身がスクラップしていた資料から入手し、そのほとんどの作品の初出等は不明である。
付録として、「井上志摩夫傑作時代小説集」全5巻の書影と、一関市博物館に唯一残された
「別冊傑作倶楽部」1959年8月号に収録された「氷雨に住む獣」の初出写真を収録。
2024 | 11/20 | 水曜日 |
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