島だけが、すべてを見ていた。
1840年、気仙沼から出航した五百石船・観音丸は荒天の果てに、ある島に漂着する。そこには、青い目をした先住者たちがいた。彼らは、その地を「ボニン・アイランド」と告げた。
時を隔てた現在。すべてを失った中年男は、幼少期、祖父が大切にしていた木製の置物をふとしたことで手に入れた。それを契機に記憶が蘇る。
彼は、小笠原行きのフェリーに足を向けた。その船には、チェロケースを抱えた曰くありげな少年も同乗していた。
物語は、ゆっくりと自転を始める。
※この作品は単行本版『ボニン浄土』として配信されていた作品の文庫本版です。
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